BMW M2 に試乗した。もう、パワーとスピードはいいよ。

BMW M2 に試乗した。もう、パワーとスピードはいいよ。

BMW M2に試乗した。でも、その良さがちっとも分からなかった。10%も分からなかったんじゃないか。

原因は、まず試乗ルートの設定にある。オーバー200キロを前提としたクルマの試乗に、日本の一般公道がふさわしいわけがない。このクルマのポテンシャルを客に味わってもらいたかったら、せめて箱根ターンパイク、もしくは富士スピードウェイみたいな本格的な高速サーキットで乗らせるべきだ。

 

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さらに、スポーツドライビングに慣れていない試乗スタッフが、まったく興ざめ。ちょっと加速したり、ヨー発生したりするたびに固まってしまう、慌てて身構える。そんなのを隣にしたら、アクセルはまともに開けられやしない。

このクルマの良さを本気で客に分かってもらおうとしているのか、売ろうとしているのか、ディーラーの何にも考えていないセールス姿勢が気になった。
それ以上に、このクルマのパフォーマンスにまったく共感できなかった。

このクルマ、大げさすぎる。
3リッター直列6気筒、プラス・ターボで370ps。そのハイパワーを受け止めるボディは1.6トン。
実際に操縦してみると凄まじい。このスペックを、どこで使えというんだ?
しかもこれ、Mシリーズのボトムモデルだ。この他にはさらにハイパワーなモデルしかない。ムダにもほどがある。

昔、このメーカーには2002シリーズという、スポーツの入門的なラインがあった。
「マルニ」と呼ばれ、ドイツ製スポーツサルーンの代名詞。アルファロメオ ジュリアなどと並んで街中でも峠道でも、スポーツな走りを楽しむのにうってつけのパワーとボディサイズだった。
僕も買おうと思ったくらい。当時、20年落ちの中古車が手を伸ばせば何とか僕にも手が届くくらいのプライスだった。

そしてバブルがきた。一般社会にもクルマ社会にも。

世間の狂乱に合わせるかのように、BMWにM3が登場した。マルニの系譜を受け継ぎ、ツーリングカーレース(DTM)のベースマシンとして登場した、スーパースポーツ・サルーン。
とはいえ、2.3L 直列4気筒エンジンは“たったの”195ps、僕が試乗したM2のパワーの半分ちょっとしかない。

あれから30年たった今、Mシリーズのモデルはものすごいモンスターマシンへと進化してしまった。何度も書くが、ボトムのモデルで370psだ。
一般社会のバブルはとっくのとうに終わったけれど、クルマ社会のパワーバブルはいまだに続いている。しかし、もはやスペックがバブリーすぎて、街中でははじけることさえできない。

いつまでパワーとスピードのバブルを続けるつもりなんだ?

1980年代の価値観のまま作り続けられたクルマ。型式やテクノロジーは新しいけれど、コンセプトは古いままのクルマ。
時代が変わり、価値観も変わっているのに、パワーとスピードへの信仰を捨てきれずに現在まで生き延びてしまったのが、M2というクルマなのだ。

そして今、そのパワーとスピードが大きくなりすぎた。街中でうっかりアクセルが開けられない。
このクルマを心底楽しもうと思ったら、M2ほどのコンパクトなモデルでも公道では狭すぎ、制限がありすぎる。

もはやドライブする場がないのに、マシンは依然として進化し続ける。肥大化したパフォーマンスが日常的に操る楽しさやスポーツの可能性を殺してしまっている。僕はとてもとても、持て余してしまった。こんなのいらない、とさえ思った。

この矛盾を、BMWはいつまで放っておくつもりか。
ムダとも思えるハイパワー・スピード闘争を、どこまで続けていくつもりか。
確かに進化は大切だ。しかし進化という美名のもとに、メーカーの独善と欺瞞が続き、僕のようなユーザーは、置き去りにされている。

もういいよ。
僕は扱えるだけのパワーとスピードがあって、それで楽しめればいいよ。

パワーがありがたいのは知っている。そして、スピードは夢だ。
でも、ここまで行き着いてしまった以上、そろそろ次の“価値”を提示してくれてもいいんじゃないか。

例えば、徹底的に軽量化したシャシーに最新の電子制御を組み合わせれば、はだしで地面を蹴るようなイマ風“オーガニック”な操縦性のスポーツカーができるはず。そうなれば、信号を曲がるときだって「スポーツ」を感じられるようになると思うんだが。

BMWは、いったい何がしたいんだろう。どこまで突き詰めれば気がすむんだろう。
M2をドライブしながら、そう思った。

良い印象を抱けなかったM2試乗、その様子はこちらにも書きました。

※関連コンテンツ 「BMW M2試乗記、こんどのカーグラにも出てましたね」

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