そろそろ、まともなEVの話をしようぜ[ダイヤモンドオンラインのヨタ記事を読んで]

そろそろ、まともなEVの話をしようぜ[ダイヤモンドオンラインのヨタ記事を読んで]

例によって視野の狭いヨタ記事だ。こんなのまだ出してるのか > ダイヤモンドオンライン。

中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか

これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない。
真壁昭夫:法政大学大学院教授 出典:ダイヤモンドオンライン(タイトルのリンク先) 

 

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ノー天気なIT屋さんがぶち上げてた話、もう3年近く前からある話の焼き直しだ。
曰く、
自動車の世界にもiPhoneと同じ“イノベーション”がやってくる。
EVの時代が来たら、iPhoneがやったのと同じ業界の革命的な地殻変動が起きる。みたいな。
iPhoneを下敷きに、御託宣を縷々述べられてるけど、

だいたいね、あんな手のひらに収まるちっぽけな電子デバイスと、
たとえEVになったとしても、クルマという工業製品が、まったく同じ土俵で並べて語られていいワケがない。

音やデータが出し入れできるだけの単なる箱に比べたら、クルマは走っちゃうんだぜ。時速100キロを超えることだってできる。そのときの動的な操安性はどう保証してくれるんだ?

エンジンをモーターに変えるだけのアッセンブル・エンジニアリングだから、すぐできる? 笑わせるんじゃないわ、そんなレゴで組み立てたみたいなクルマ。おっかなくて乗れたもんじゃない。
それに、動くモノには当然NVHが発生する。クルマもろくすっぽ運転しないようなヤツが理解したり対策できるのか。HMVじゃないぞ。

それに、クルマは社会インフラだ。あと、iPhoneとクルマが決定的に違うのはこの点だ。個人所有の電気のおもちゃで、すぐに機種変できるiPhoneとはまったく背景が違う。
インフラは、それを構成する要素が変われば、社会的な対応が必要となる。ガソリン前提のクルマのインフラをEVに換えようとしたら、EVスタンドが必要になることくらい、ガキでも分かる。
そのEVスタンドの先には火力だか水力だか再生可能だか、何らかの発電施設が必要になる。その発電施設にも影響が及んでる。

テスラが開発した新型トレーラー
画像は出典元より

米テスラがこのほど発表した初の電気だけで走る大型トレーラーは、充電に最大4000戸分の住宅が使うのと同量の電力が必要になるという──。
日経ビジネスオンライン「テスラのトレーラー、充電に4000戸分の電力必要」

つまり、EV化にはものすごい電力が必要となり、それをまかなうために、

今回のEV移行方針を表明するはるか以前、今から4年前の時点ですでに英国政府は、クリーンで安定した電力供給を実現し、需要を抑制するために1000億ポンド(約14兆円)を超える投資が必要だと試算していた。
ロイター「焦点:英国のEV移行に電力不足がブレーキ、巨額投資必要に」

全車EV化をめざすなら、これから莫大な電力インフラ整備が必要になる。

そもそも、ガソリン自動車は個々のクルマでエネルギーを生み出して走ってた。それがEVになったら大元となる電気は数カ所の拠点で生産しないといけなくなる。エネルギーの中央集権化、だ。
交通というインフラの変革に押されて、電気エネルギーというもうひとつの社会インフラも変革が迫られてくるのだ。ハードル高いよ、これは。

で、そこまでしても、なんと!

「EVシフトでCO2は減らない」東大名誉教授が試算
「今の技術で電気自動車を急いで普及させるのは得策でない。ウェル・トゥ・ホイール(Well to Wheel、石油生産から自動車の走行まで)でみたCO2排出量のライフサイクルアセスメント(LCA)で、電気自動車のCO2排出量は必ずしもガソリン車に比べて少ないとはいえないとの指摘が以前からある。私はこれに自動車製造時のエネルギー消費を加味して試算してみた。
日本経済新聞 有料会員記事

つまり、EVは本当はエコじゃないんじゃないか、という声まで出てきた。

ほれみろ。WtWの意識とかなしに目先の“イノベーション”ばかり追い求めている技術者とか、自分の専門分野しか分からない視野がアリのように狭い教授先生とかが語るEV論の、なんとお花畑なこと。
それがやっとバレてきた。そういうネタが出揃ってきた。

ちょっと話がそれるけど、古いクルマから最新のエコカーに乗り換えるのって、無条件に「エコ」と言われ、それが古いクルマへの重課税の拠り所になっているけど、それって本当か、とずっと思っている。

鉄やアルミを作るための資源やエネルギー、さらにハイブリッドカーにはレアアースなどの基調資源をふんだんに使ったバッテリーも必要だ。そういう新しいクルマを作るためのトータルの資源やエネルギー、CO2排出量と、昔作ったクルマのそれを比べたら、旧車の方がゼッタイに少ないに決まってる。で、さらに、走行中に消費するガソリンとか排出するCO2やNOxを比べて、トータルでどうなのか?
そんな論議もなく、単にムードで「新しい方がエコ」とか言っちゃってる世間、というか政府が大嫌い。

それと、今回の「EV=エコ」という無条件・思考停止の論調も根っこが同じだと思う。
エコって、そんなに単純じゃない。

だからといって、クルマがEVにならないとは思わない。クルマもいずれ、化石燃料から脱却しなければならないだろう。それが電気なのか、燃料電池なのか、分からないけど。

とにかく。
いままで表舞台に出てきてしゃべる人に、いい人がいなかった。工業製品としてのクルマも、社会インフラとしての交通もまったく知らないようなノー天気で、ちょっとだけ声がでかいようなヤツばっかりだった。なので、聴いたり読んだりしても、噴飯物の意見や記事しかなかった。

前にも書いたけど、こういう意見がいろいろ出てきて、いろいろ集約されて、“未来”ができてくるんだろうと思う。

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EVって、どう作るの?