EVだけじゃ、地球は幸せになれない。[ 敵は炭素で内燃機関ではない。次の脱炭素技術を探そうぜ ]
- 2022.01.21
- こんなのはイヤ!
- COP26, カーボンニュートラル, カーボンフリー, ハイブリッド, 合成燃料, 敵は炭素、内燃機関ではない, 水素, 脱炭素, 豊田章男
地球の温暖化をこれ以上防ぐには、CO2を減らさないといけない。
それにあたってクルマは全部EVにしないといけない!
ハイブリッドはエンジンがCO2出すから1台たりとも認めない、水素とかもダメ!!
ぜーんぶ、EVにしないといけないんだよっ!!!
って、ドイツを中心に欧州勢が息巻いてたんだけどね。
で今年になって、こんなニュースが入ってきた。
もう無理しなくていいよ、ドイツ
(見出し)
ドイツ運輸相、EV1500万台目標から変更(リード)
新政権は、電気自動車の普及を促進する目標の一環として、ハイブリッド車をカウントすることになりました(本文)
ベルリン–2030年までに1500万台の電気自動車を走らせるというドイツの目標には、完全電気自動車とハイブリッド車が含まれると、同国の運輸相が昨年末の連立政権合意での公約から後退する形で述べた。(以下略)出典:Automobotive News Europe https://europe.autonews.com/automakers/german-transport-minister-reverses-15m-ev-goal
※当該ページの英語を当方で日本語に機械翻訳しています。
2021年末、3党の連立政権になったドイツでは、2030年にEVだけで1500万台という目標設定を連立3党の合意目標として設定していた。だけど、
その1500万台の中にハイブリッド車も含んでもいいじゃね? と運輸相が言いだした、という記事内容。
その前にも、昨年暮れの連立3党での合意事項の中には、以前のメルケル政権では「ぜってー認めねー」って言ってたハイブリッド(主にプラグインハイブリッド)車や、水素やそれを使った合成燃料なども、「ま、やってもイイよ」ってことになってた。
つまり、
「EV純血主義」を標榜してたのが、ここに来てどんどん崩れてるわけ。なし崩し。
さらに今年に入って「ハイブリッド増量」も考えるようになってきた、と。
そもそも、ですよ。
ドイツ政府は日本の震災での原発事故を見て、2022年までに原発完全撤廃とか言ってるくせに、
CO2削減=脱炭素の策として、電気が大量に必要になるEVだけでやろうだなんて、どんだけお花畑なんだと思ってた。
なので、昨今のなし崩しのハイブリッド容認は、ようやく目が覚めたか気づいたか、という感じ。
あの岡崎五朗さんも、こんなこと言ってますよ。
岡崎五朗さんFacebook、1月18日のフィードより
EV純血主義は、ドイツ産業界の企み
20世紀後半あたりから、自動車関連の社会課題を克服してきたのは、主に日本メーカーだったわけですよ。代表例が排気ガス規制、そしてハイブリッド技術。
欧州、特にドイツのメーカーはそれが気にくわなくて(あいつらプライド高いから)、いろいろ反転攻勢を仕掛けてきたんだけど、ことごとく失敗してた。
いい例が、フォルクスワーゲンが2015年にやらかしたディーゼルゲート事件。
それまで欧州勢はCO2削減策として、ハイブリッドに対抗してディーゼルエンジンの普及を進めてきたんだけど、あの事件で一気に信頼失墜。
自分でワナを張っておいて自らそれにハマる様子を池田直渡さんはブラック魔王に例えて、『欧州のEV戦略は「ブラック魔王」で読み解ける』なんて記事も書いてたり(笑)。
で、そのブラック魔王は、ディーゼルゲートの失墜を取り戻すためにEVに突っ走ったわけ。
ドイツが、ハイブリッドなんかぜってー認めねー、って言ってたのはそういう背景がある。
それを聞きかじりだけでモノ言う日本のマスコミとか、グレタ・トゥーンベリさんに触発されたニワカとかが「なんて進んでるの♡ドイツ(欧州)」とか目をウルウルさせて、その一方で「日本メーカーは遅れてる」とかわちゃわちゃ言ってたわけ。
ESG投資が拍車をかけた
これはボルボグループの株価5年チャートなんだけど、爆上げの始まりとなった2020年3月下旬、どういうことが起きていたかというと、
ボルボカーズ、4月から経営体制を再編…電動化を加速へ
という発表があったわけ。この発表後に株価は一気に爆上げしてる。株屋さん的に言うと、EV宣言を市場が評価した、と。
世界的にESG投資が流行ってるけど、そのキーワードのひとつとしてEVがあって、それを標榜する会社は株価がアガる。昨今のEVブームは株とかの関係者が片棒担いでるとも言える。
いい例がテスラで、時価総額ではトヨタを抜いている。
生産台数ではトヨタグループの1/10程度なのに。
株式の参加者たちがEVに夢見ちゃって(=儲かると信じて)、低金利のカネ余りもあって、そういう企業にじゃぶじゃぶカネ突っ込んでるわけ。
それに乗ってボルボカーズ(あとジャガーとかも)は今後の生き残りをかけて、EV純血宣言をした、と。
それが冒頭のドイツの方針変更で、いわばハシゴを外される格好になったわけで、これからどうするか見もの(単なるイジワル)。
余談だけど、ボルボカーズの親会社は中国の浙江吉利控股集団(ホールディンググループ)、傘下に中国の自動車メーカー吉利汽車があって、そこは中国政府からの補助金をバンバンもらってEVを安く作ってたくさん売っている。
ボルボはその吉利汽車が安く作ったEVのパーツを安く仕入れてきて、
一生懸命にブランドイメージをつくってきた“安全技術”を散りばめて付加価値を上げて=プライスタグを釣り上げて、
安いEVを高く売って利ざやを稼ぐ、濡れ手に粟のビジネスモデルになるんだろうな、と。
株買っておいた方がイイかな(笑)
※ちなみにESG投資は今のところパフォーマンス良くないというレポートが財務省サイトに上がってます。
トヨタの横綱相撲が光る
潮目が変わったなー、と思ったのは2021年10月末から開かれた国連気候変動枠組条約第 26 回締約国会合、いわゆるCOP26。
この会議で議長国イギリスが「2040年までにZEV100%にしようぜ」と提案したけど、賛同する国やメーカーが圧倒的に少なかった。
ちなみにZEVとはゼロエミッションビークル=排出ガスを一切出さない車両のこと。なので水素エンジン等は除外され、EVにほぼ限定される。
このお粗末な提案に賛同したのは、
国だとオーストリア、ベルギー、カナダとか。日本はもちろん、ドイツさえも賛同してない。
メーカーだと有名どころはフォード、GMくらい。ドイツのメーカーで賛同してるのはメルセデス・ベンツのみ。日本メーカーは1社たりとも賛同してない。
イギリス政府は、“これに賛同しないやつは議場に入っちゃダメ”みたいな、いじめっ子みたいなルールとかも作って賛同を促したらしいんだけど、この体たらくな結果。
脱炭素ならEVだよねぇ〜みたいなぬるい空気の中、いきなり逆風が吹いたような事態に、日本の鈍感なマスコミもさすがに気づいて報道してた。
この惨憺たる結果、考えてみれば当たり前。
提案内容を実現するには、中東の砂漠とか南米アマゾンとかにも原発作ったり(火力発電はCO2出すからNG)熱帯雨林切り倒して太陽光パネル置いたり送電線引いたり、要は地球上のありとあらゆる地域の自然をぶっ壊して電気供給しなくちゃいけなくなる。しかも猶予はたった20年!
お花畑にもほどがある。無理スジ過ぎ。
こうなる前から、トヨタ社長で自動車工業会会長でもある豊田章男さんは、こんなこと言ってた。
これをキャッチフレーズに、脱炭素のためにはEVだけでなく水素など他の選択肢も視野に入れるべき。だって、脱炭素にデフォルトとなるような技術や仕組みはまだ見つかってないでしょ、そういった内容の発言をあちこちで繰り返してた。
まさに正論。
実際、CO2削減で日本はマイナス23%!(下グラフ参照)と、他国とはケタ違いの達成度合いだし、その原動力がハイブリッド技術であることは明らか。エビデンスあるだけに、説得力がある。
それだけでなく、2019年にトヨタ自動車はハイブリッドに関する特許2万3000件を無償開放し、他メーカーのハイブリッド技術活用をサポートしている。
敵に塩を送ってるわけ。
昨今、欧州メーカーからハイブリッドが出てるけど、多分、その特許技術も使ってる。
で、これからもどんどん出てくるはず。
こうやって、
というのが豊田章男さん、というか日本全体の主張。
COP26の絵空事のような提案なんて足もとにも及ばない、とても現実的で「納得力」がある。
真っ向からの正論と、敵に塩。まさに昭和の大横綱、大鵬の横綱相撲ですよ。
白鵬もたくさん勝ってるけど、あの人は立ち合いで張り手とかするからキライ(笑)。
この期に及んでも、
ZEV普及の鍵を握っているはずの自動車産業が、本当に効果的な脱炭素モビリティ実現に向けて、今、何を成すべきなのか。日本にとってシリアスな「問い」を投げかけられたのが、今回のCOP26だったと言えるのかも知れません。
出典:EVsmartBlog「COP26総まとめ「2040年までにZEV100%」宣言に日本が署名しなかった理由とは?」https://blog.evsmart.net/ev-news/cop26-summary/
まーだこんなこと言ってるブログもあるけど、なーんでいまだにZEVにこだわってるのが意味わかんない。
そうじゃないでしょ。
脱炭素にはEV(ZEV)のほかにも方法がありそうだよね、ってことをみんなで確認できたのがCOP26の成果のひとつだし、これからの出発点だよ。
一部勢力が起こして強欲なヤツらがみこしを担ぎ、無知なヤツらが囃し立てたバカ騒ぎのようなEV(ZEV)純血主義は以上終了。
これからCO2削減、脱酸素の社会構築に向けて、日本も欧米もみんなで一緒になって、
電気も水素も、いろんな技術をほじくってハイブリッドに代わる次の“鉱脈”を探し当てるのが、これからやるべきことでしょ。
それが脱炭素という、大きな大きな課題解決の一番の近道。道のりは長そうだけどね。
「EVじゃないなんて遅れてる」
なんて言うヤツこそ、時代遅れで無知の烙印押されるから、これから。
気をつけたほうがいいよ(笑)。
いろいろ読むのがめんどくさい人は、これを見るとイイかも。
タイトルが左派系出版社みたいなのがアレだけど(笑)
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