クルマは生き残れるか。[ トヨタとマツダの業務提携に感じた希望と不安 ]

みなさまご承知の通り、今私たちの前には、GoogleやApple、Amazonといった新しいプレーヤーが登場しております。全く新しい業態のプレーヤーが、『未来のモビリティ社会を良くしたい』という情熱を持って私たちの目の前に現れているのです。未来は決して私たち自動車会社だけで作れるものではありません。

出典:「マツダさんに負けたくない」豊田章男社長が口にしたクルマ愛と危機感
画像はトヨタ グローバルサイトより

これは8月4日に発表されたトヨタとマツダの業務提携の記者会見での豊田章男社長のコメント。両社の業務提携で、もっと面白いクルマが出てきてくれるといい。と、希望を持った。

 

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IT企業なんかに“本当のクルマ”が作れるわけがない

「自動運転とかコネクテッドとかいっても、IT企業には安心快適なクルマは作れないだろう?」
と、冒頭の豊田章男社長のコメントはIT業界に対して宣戦布告しているようにも僕には感じられた。それを代弁するようにこの記事の筆者は、

 昨今、巷で語られる馬鹿馬鹿しい話がある。曰く「電気自動車になれば部品点数が減って、垂直統合から水平分業になる。エンジンという複雑な部品が要らなくなったことで、自動車メーカーへの参入障壁は下がり、コモディティ化して旧来の自動車メーカーのアドバンテージはなくなるのだ」。

と書き、その実証例として他社のコンポーネントを集めたロータスのクルマづくりを挙げている。
いくらパーツを寄せ集めても、ロータスのようにクルマや走りに対する深いノウハウやポリシーながないと「良いクルマ」にはならない。それは設計から製造の現場まで言えるのだ。
iPhoneを台湾の工場で組み立てるのとはわけが違う。クルマを動かす経験もノウハウも圧倒的に未熟なIT企業なんかに、本当の意味でのクルマづくりなんてそうそうできっこない。僕もそう思う。

安くて便利がいい、そんな市場で“本当のクルマ”は生き残っていけるか

デジカメはいま、ほとんどスマホに駆逐された。今どきわざわざデジカメ買おうなんて人はほとんどいなくなった。ヨドバシカメラのデジカメ売り場もかなり小さくなった。
いまデジカメで残っているのは一眼レフやミラーレスとかのハイエンド機か、GoProみたいなアクションムービーくらいか。

クルマはデジカメよりも部品点数が圧倒的に多いし、前述のロータスの例にあるように複雑な商品だ。
なので、クルマ門外漢のIT業界が入り込んできて“タイヤで動くハコ”は作れても、操縦安定性や安全性が確立されたクルマを作ることは難しいだろう。

ただね。
以前、薄型テレビで液晶 VS プラズマ論争があった。
簡単に作れる=安いけれど動画再現性がよくない液晶と、自発光で動画再現性に適しているけれど製造が難しい=高いプラズマという図式。
あるオーディオ会社が社運をかけて高精細・高音質のプラズマテレビを開発、販売した。オーディオ・ビジュアルのマニアには大いにウケたけれど、いかんせん値段が高く普及には至らなかった。結局、画質は良くないけれど安い液晶テレビが大勢を占めた。
とりあえず映像が見れて、何言ってるかが分かれば、テレビはオッケー。それが市場が出した答えだった。

こんなのがそこらへんをヨタヨタ走り回る世の中なんて、僕はまっぴらごめんなんだが

それと。
ビールとビールテイストの発泡酒。発泡酒は明らかに不味い。ビールテイストといっても本来のビールとはかなり違う味だ。
にもかかわらず「どっちもあまり変わらないじゃん」と、両者の味の違いが分からない人が身近に何人もいる。だったら安い方が良いじゃん、と発泡酒を選ぶ。「ビールはなんのためにあるの」「高いだけじゃん」とまで言う人もいる。

市場は残酷だ。開発者が商品の価値を上げるべくミリ単位のこだわりを持って開発しても、なかなか理解してくれない。
それよりも、「安い」「便利」「手軽」がいい。

「撮れればいいじゃん」「安ければいいじゃん、味なんてどうでも」
そういう市場のノリが、クルマにも及んだらどうなるか?

乗れればいい、動けばいい、目的地に着けばいい。そんなユーザーばかり増えたら、新参のIT企業がでっち上げた“タイヤで動くハコ”がハバを利かせてしまうかもしれない。操縦安定性が不出来で安全性に問題や不安があったとしても。
クルマもデジカメや発泡酒の二の舞にならないとは限らない。章男社長が守り育てようとしている“クルマ愛”なんて簡単に吹き飛んでしまうかもしれない。

今回、僕はトヨタとマツダの業務提携で、クルマの未来にちょっとだけ希望を持った。
でもその一方で、不安も大きくなった。

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「充電池に取って代わられる」「エコじゃない」とか言われながらも、これはしぶとく生き残ってる。結局みんな「安い」のがいいんだよ。