バイバイ、アルファ。僕はこれから、アバルトで走るよ。

バイバイ、アルファ。僕はこれから、アバルトで走るよ。

前のエントリから続く)

僕が乗りたいアルファは、どこにある?

クルマ探しを始めた当時、アルファのラインアップにはジュリエッタの他にもmitoがあったけれど(いまはすでにカタログ落ち)、デザインがまったくの好みではなかったので最初から選択肢になく。

それだったら、ということで浮かんできたのが、アバルト プント。
mitoのQVとアバルトのグランデプントは、同じシャシーとエンジンだし、デザインだったらグラプンの方が格段に好き。デビューしたときからずっと気になっていたし。

「カーグラフィック」2009年7月号の記事。アバプンとmito QVの比較試乗。これも参考になりました。
「カーグラフィック」2009年7月号の記事。アバルト グラプンとmito の比較試乗。これも参考になりました。

当時は、グラプンから「プント Evo」にマイナーチェンジしていて、顔つきとかも変わっていたけど、やっぱりまだ気になっていました。

ならば、ということでサソリのマークのディーラーへ行ったわけです。
まあ、ほとんどのディーラーでは、サソリと蛇は同居してるわけですが(笑)。ただ、僕が最初に行ったアバルトのディーラーは、珍しいことにサソリ専売店でした。

試乗したアバルト プント。このときは限定のスーパースポーツだった。

最初の試乗のとき、同乗したセールスは「もっと、踏んじゃってください」って言いました。
僕は初めての客なのに。ひさびさの左ハンドル&マニュアルなのに。朝からの雨で路面はハーフウェットだったのに!
せっかくだから、素直に踏んでみましたよ。オトコがすたるし。そうしたら!!

「乗りたかったアルファが、ココにあった!」

蛇と盾のエンブレムで味わったあの楽しいフィールは、20年の時を超えてサソリのマークに受け継がれていたわけです。

現代のアバルト プントをドライブして、20年前のアルファで体験した記憶が鮮やかに蘇ってきました。
特に、エンジンのフィール。

アクセルをちょっとでも踏むと、自分から勝手にぐんぐん回り出す感じ。はずみ車みたい。
この元気さ、無邪気な感じ。そしてエンジンと一緒になってドライバーの心が躍り出す、アドレナリンがわき出す、あのフィール。
もう、楽しすぎるわけですよ。

ただ、冷静になってみると、今のフィアットエンジンと昔のアルファのエンジンとでは、ちょっと回り方のフィールが違う。

「もっと回せもっと回せ!!ってエンジンが言っているかのような」そんな評をフィアット関連のレポートでよく目にするけれど、確かにそんな感じ。
その回り方は、上品とか上質とかそういうところには気を使っていない、ちょっとガラガラしたいかにも大衆車のフィール。ふだん着の感じ。
決して雑なわけではないけれど、カジュアルというか、ちょっとゴワゴワとしたジーンズの感触のような。
「バ行」系に聞こえるラフな印象のエキゾーストノイズも、そんな感じに拍車をかける。
でも、難なく楽しく回るので、安心してどんどんアクセルが踏める。だからますますドライビングが愉快になる。
楽しさのPDCAがぐるぐる回りだす。

それでも。
アルファ Berlinaのエンジンはもう少し大人っぽくて艶っぽかった。
綿は綿でも、薄く軽く織られたオーガンジーのような上質感。でも決してシルクではない。
機械としては鋳鉄のブロックががっしり作ってある、だからバイブレーションとかノイズにも微妙な「しっとり感」がある。そんな印象。
古きよき時代のオーバークオリティで贅沢な作りのエンジンの良さ、といえるかも。フィアットとは“車格(社格?)”も違うし。
「カ」に近い音質から「コォー」と、回転が上がるにつれてまるで調律しているみたいに変化する、乾いた感じのエキゾーストもフィアット系とは違っていた。

それでも、それでも。
僕が乗りたかったアルファの熱い“血”が受け継がれているのは、このサソリのエンブレムを付けたクルマだと思ったわけです。
その後、2回目の試乗をして、第三京浜なども走らせてもらって確信したわけです。

そして、その試乗の最中にセールスがサラッとひとこと。
「すでに本国に来年分のオーダーをしていて、それがなくなれば、アバルト プントは日本では販売終了です」

この一言で、僕のクルマ選びの選択肢は、ほぼゼロに。
まさに、トドメを刺されてしまったわけです。