ヤンエグ(死語)VS 没落貴族、どっちが好き? いや、アルファ ロメオのことなんですが。

「俺たちが血のションベンを流すような苦労してるっていうのに、まったくあいつらときたら!!」

かつてのフィアット総裁、ジョバンニ・アリエリがアルファ ロメオに対してそんな文句を言ったそうだ。
1970〜80年代、フィアットは販売低迷に苦しみ、アルファロメオは大赤字で国営の管理下に入った。そんな時代。

民間企業のフィアットは、ヒット作に恵まれずコストダウンとレイオフで何とか苦境を凌いでいた一方、
国営管理のアルファロメオは本業で赤字を垂れ流しつつ、さらにF1レースへの参戦も続けていた。税金でエンジンやマシンを作り、レースを転戦し、そして負け続けていた。

アリエリのグチも、よくわかる。
だからといって、レースをやめろと言い出す人はそう多くはなかったそうだ。アニエリも含めて。

だって、アルファロメオはレースをやるのが当たり前のメーカーだったから。それがイタリアの“常識”だったから。
たとえ国営のもと、税金をジャブジャブ使い、事業収益が上げられず、さらに最高峰のレースに道楽のように出続けていても。
アルファロメオは、レースをやってこその会社だったのだ。

なんでこんなことを思い出したかというと、この記事。

『フォルクスワーゲンの新車販売 トヨタ抜き首位ほぼ確実に』
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170111/k10010834991000.html

2年前、ディーゼル排出ガスデータの不正改ざんで苦境に立ちながらも、すばやいリカバリーを見せた。
これぞ、ドイツの意地なんだろう。

ただ、この苦境を理由に、この会社(グループ会社も含めて)はWRCとWECの2つのワールドチャンピオンシップからの撤退を発表している。

『フォルクスワーゲン、16年限りのWRC撤退を正式発表! カスタマースポーツに集中』

『アウディが2016年限りのWEC/ル・マン24時間からの撤退を正式発表』

世界一の規模を誇る自動車会社グループなのに、なんだか貧乏くさい。ま、金持ちほどケチだ、とはいうけれど。
今後はEVに注力するから、これからはフォーミュラE参戦だって!? あんなリアルサイズRCカー・レースの何が楽しいというんだろ。

ま、化石燃料エンジンのレースなんて将来がないし、これ以上やっても意味ないな、と思っていたところにちょうど良いタイミング(?)で不正が発覚して、これを理由にムダなことはスパッと切った、というのが本当のところだろう。
さすが、世界最大の自動車製造会社のことはある。お利口だ。

スーツをパリッと着こなし、つねに意識高く先を見通し、最新の情報にぬかりなく、もしものときのリスクヘッジも万全、現代的な仕事ができるビジネスパーソン、といった感じかな。バブルの頃なら、ヤンエグ?

それに対して、昔のアルファロメオはどうだ。
いつまでたっても過去の栄光から抜け出せない、没落貴族。プライド高く、理想も高いんだけど、なにせ気力、体力、何よりも財力が追いつかない。昔は凄い人だったからスポンサードはあるけど、それもいつまで続くやら・・・(実際、このあとフィアットが買い取った)

どっちが良いか、って言われたらそりゃ、前者なんだろうけど。娘の婿に理想的?
ただ、後者には限りなく魅力を感じるんだよね。お酒でも持っていって、いつまでも隣で一緒に話をしていたい、そんな感じ。

未来とか資源とかビジネスとかなんかより、「走る」ことにバカみたいなヤツの方が僕は大好き。
だからアルファロメオって、いつになっても気になるんだよ。

だからお前の人生、パッとしないんだよ、って奥さんから文句言われそうだけど。

そんなアルファロメオも、90年代にもう一花咲かせるわけなんですが。
この時代、熱狂した人も多いんじゃ? 僕もその一人。