フランスから「禅の心」を教わった。[ ルノー トウィンゴ ZEN 5MTに試乗した]

フランスから「禅の心」を教わった。[ ルノー トウィンゴ ZEN 5MTに試乗した]
5速マニュアル、ダッシュボードも質素なトゥインゴZEN

シフトチェンジの瞬間、大爆笑してしまった!
だって、昔乗ったサンク アルピーヌとシフトタッチが似ていたから。

昔々の昭和時代、知り合いがルノー サンク アルピーヌに乗っていた。初期型のメカチューンで、中速域を中心とした実用的なチューニング、ふかふかのシート、キビキビ速い、そのくせ快適な乗り心地、オシャレな内外装。とっても良いクルマだった。その思い出は、ここに書いた。

でもサンク アルピーヌ、シフトタッチがダメダメ。ゲート感がまるでなく、1と3速、2と4速がまったく分からない。乗り始めは必ずと言っていいほどシフトミスをしていた。でも3、4回ミスしたら、あとは慣れていたけれど。

あのときの左右方向にグラグラではっきりしないタッチが、21世紀のサンク、トゥインゴ ゼンにもあった。
ニュー トゥインゴの発表にあたって、昔のサンク ターボからデザインを引用した(リアビューは確かに似ている)とルノーからのリリースにあったけれど、何もこんなところまで似せなくてもねぇ、、、などと同乗したセールスの人と盛り上がりながら試乗が続いた。

 

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5MT仕様の「ZEN」にようやく試乗できた

この前試乗して、とっても好印象だったトゥインゴ。でもお目当てのマニュアルの試乗車がなくずっと乗ってみたかったのだけれど、前の試乗とは別のディーラーでやっと乗ることができた。

結果から言うと、やっぱり良かった。すごく良かった。コレコレ、コレだよ。っていう感じ。

冒頭に書いたシフトタッチなんて、どうでもいい。自動車評論家を名乗るような人が鬼の首を取ったようにタッチの荒さをあげつらうだろうけど、そんなのオーナーになって日常的に乗り回すようになればすぐに慣れる。

何より素敵なのは、その動力性能だ。
この日乗ったトゥインゴ ZEN(ゼン)は、5速マニュアル+998c.c.ノンターボの組み合わせ。71ps、9.3kgmしかない。ちなみに他はツインクラッチ+897c.c.ターボで90ps、13.8kgm。
パワーがないので、さすがに後ろ足で地面を蹴るようなターボ版の乗り味は、このゼンでは感触は薄い。

馬力がない、トルクがない。なけなしのエンジンパワーを、雑なタッチの5速マニュアルを駆使して走る。
一生懸命にアクセル開けないと前に走っていかないし、すぐに回転が上がってしまう(タコメーターはない)ので、一生懸命にシフト操作しないと加速が続いていかない。
ま、その加速にしても大したことないので、いつもアクセル全開に近い操作が求められる。

一生懸命にクルマの操作して、一生懸命にクルマを走らせる。コレコレ、コレだよ。
クルマで走るって、こういうことだよ。これがドライビングの原点だよ。
すがすがしくて、心軽くなって、なんか若返った気分になった(笑)。

モールやアルミホイールとかいった加飾がほとんどない、すっぴんボディ

いまのクルマにない「美徳」がここにある

ルノーはラインアップ中のベーシックに近いクラスに「ZEN(ゼン)」というグレードを用意している。日本の「禅」から取ったネーミングで、ルノーはその位置づけを次のように次のように書いている。

最上のモノを求める刺激的な性格付けのインテンス、クルマはベーシックが一番で使い倒すことに意義ありという行動的なアクティフに対し、ゼンは人生を彩るための豊かさを求めながらも、一方で自分が必要とするものを厳選する知性的な部分も併せ持つという、落ち着きのあるパッションとでも表現できようか。

情報源: RENAULT PRESS Vol.28

そもそも論として、日本に昔からある「禅の心」って何だろう? と思ってちょっと調べたけれど、禅の世界は広くて深くて僕みたいなイチゲンさんにはひと言でまとめられない。
でもこの日、トゥインゴ ゼンに乗って分かったことがある。

「ミニマル」ということだ。それをルノーは「ZEN」というネーミングで表現したんじゃないか。
日本語で言うと「質素」「倹約」の美徳。

ターボとかオートマチックトランスミッションがない。馬力もトルクも最小限。
他のグレードにあるオートエアコンとかアルミホイールもなし。インテリアも最小限で良くいえばシック、有り体に言うと安っぽい。前に試乗したターボ/ツインクラッチ版のオシャレで華やいだ雰囲気がない。ボディカラーが素っ気ないシロだったせいもあると思う。

必要最小限のパワーと装備。それでクルマらしさを表現したのが「ZEN」というグレードだ。
昔々のクルマで「デラックス」と名前だけ贅沢なグレードがあったけれど、あれに近い。
いま風に言うと「ミニマル」だ。その意味とか混同しがちな「ミニマム」との違いについてはこのページをご参照。

見栄張ってむりやり絞り出したようなパワーとか、あれもこれもと欲張って脂肪太りしたみたいなボディや機能とか、そういう物欲功利主義にまみれたいまのクルマに対するアンチテーゼ、それが「ZEN」だ。

「これだけあれば、ちゃんと乗れるし、どこか行けるし、なんてったって楽しいだろ?」 そんなルノー開発者のメッセージが聞こえてくるよう。
まさに「質素」の見本のようなクルマ。だけど運転するとなんだか楽しい、ウキウキしてくる。
速くないけど、心に効く。これぞまさしく、ゼンのミニマル・ドライビング。

ついでに見積もとってみた。延長保証とフロアマット、ETCを付けて乗りだしほぼ200万円。今どきのファットな軽自動車とたいして変わらない。質素は、倹約でもあるわけだ。

クルマなんて、こんなんでいいんだよ。充分。足るを知る。
シンプル・イズ・ベスト。シンプル・イズ・ファン。
そんな「禅の心」をフランスのメーカーから教わった気がした。

(追伸)
今年末には「GT」グレードも日本導入されるそうです。897c.c.ターボ+5MT。もうちょっと積極的に走りたい人にはこっちかな。RSモデルは出ないんだし。

参考ページ

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クルマがダメなら、せめて自転車?