マシンの音は、ドライバーの意地だ、プライドだ。[ 今でも思い出す、セナとプロスト、鈴鹿の予選 ]

旧ツイッター(現X)でF1の“音”の投稿があって、そこから12気筒だ1万回転だ、とかいう話になったんだけど。

考えていたら、ここにたどり着いた。
1990年、鈴鹿で見たセナとプロストの予選。

僕は130Rでこの予選を見てた。
デグナーの立ち上がりと、130Rのクリップ、両方が見える場所を選んで、草っ原にシート広げて。
ムービーにもあるとおり、プロストはセナをぴったりとマークしていて、セナがピットを出るたびに追走してた。
だから、ホンダV10とフェラーリV12、双方が全速力で上げる雄叫びを立て続けに体験することができた。しかも1ラップでデグナーと130Rの2回。記憶では予選中にそれを確か2セットは聞けたと思う。

2台の狂気の音、それが立て続けにやってくる。綺麗とか迫力があるとか、そんなんじゃない。別世界。トリハダ。

セナとプロスト、両者の意地やプライドが、あの音をエンジンから絞り出せてたんだ。今回、それに気づいた。
あんちくしょうより速く走りたい。その情念がガソリンを爆発させ、空気を動かし、サーキットに充満していた。
それだけじゃなく、エンジニアがそのエンジンに託した情熱や理想もいっしょに燃えてる。
もろもろの思いが1秒間に1万回以上を爆発を繰り返して、マシンを突き動かしてたんだ。

情念が強いほど、音はどんどん大きくなってサーキットに溢れ出す。マシンを俊敏に動かす。
だからあんなに大きく、異常な音になってたんだ。
あれがレースってもんだし、レーシングカーってもんだよ。

赤白と深紅の2台のマシンが、爆音を残して重なり合うように、矢のように通り過ぎていったのを今でもくっきり憶えてる。
あの瞬間は、僕の宝物になってる。
まさに、ガソリンの時代。ドライバーの時代。見れて、マジで幸福だった。