アルファ ニュー ジュリア、日本デビューしますね
なんかね、とろっと回るんですよ。昔のアルファ、1980年代くらいまで自社で開発・製造していた頃のエンジンは。
とにかく、爆発からしてふんわりしている。そのチカラがクランクシャフトを柔らかく、でもしなやかに回してる。そんな感じ。
だから、回転を上げていっても、どことなく角が取れた感触の回り方で、優しく、でも力強くクルマを前に進ませる。
クルマの中心にある“ハート”がそんなだから、全力発進させても、血相変えてすっ飛んでいく、というよりは「そろそろ行きますか」という感じ。お金持ちがちょっと本気出しちゃおうかな、といった風情で、どことなく余裕がある。
エレガントでスポーティなアルファならではの乗り味、あれはきっと、あのエンジンのおかげ。
1900年代から連綿とクルマを作り続け、フェラーリがビジネスモデルとして参考にしたアルファの「とびきり速くて贅沢なオンリーワン」「手間もお金もかけるクルマづくり」は、エンジンにえもいえぬエモーションを宿した。そのテイストがアルファのスピリットであり、伝統となった。と、僕は信じている。
だから、いつの時代もアルファはクルマ好きを虜にしたし、その歴史の最後、集大成的な存在として生み出された通称「ジュリアシリーズ(105系)」は圧倒的な支持を獲得した。
僕もその105系のひとつに乗って、アルファに感化されたクチだ。
さて、そのジュリアシリーズに“新型”ができて、日本でもようやく発売されることになったらしい。
いつも通る首都高脇にある大きなアルファロメオのビルボードが、あの細長い盾の広告に変えられ、登場を予告している。ウェブサイトも更新され、期待感を煽っている。
でもね、僕はほとんど興味ないんだ。
あのとろっとしたエンジンの感覚が味わえるかというと、きっとそうではないだろう。今どきハイパワーなエンジンはどこだって作れる。でも、あそこまで情感に富んだハートは、もうどのメーカーも作れないんじゃないか。きっといまのアルファ自身にもできないと思う。過去のエンジンをリビルドするとかならともかく。
っていうか、フィアット・フェラーリ・マセラッティ・アルファ連合という、ビジネスの都合で生み出されたニュージュリアのエンジンに、あそこまで繊細なエモーションを期待する方がムリだ。エコ、資源、コスト・・・いろんなファクターでがんじがらめになった今の自動車メーカーに、昔のスピリットを再現すること自体、お門違いだ。
聞けば、ニュージュリアのクアドリフォリオのプライスは1,000万円コースだそうだけど、それだけ札束が用意できるなら、僕は“元祖”、105系ジュリアに払う(最近は相場がかなり上がっているらしいけど)。その方が満足感はずっと高いはず。
僕がアルファの“教本”にしているひとつ。
アルファがほんとうの意味で輝いていたのは、このあたりまでだと思う。
-
前の記事
スピードメーターは、なぜ270km/h表示なのか? ウチのアバルト プント 2017.06.25
-
次の記事
ブレーキ残しながら曲がる。その第一歩は・・・ 2017.06.27