僕が欲しかったアルファは、アバルトだった。放浪編

僕が欲しかったアルファは、アバルトだった。放浪編

アルファロメオの、根っからのファンなのです。ワタクシは。ちなみに結婚が決まったとき、式場よりも先に、新婚旅行の行き先としてイタリア、というよりミラノ、というよりアレーゼのムゼオ・アルファロメオに行くことを決めたくらい。このブログにも「アルファロメオ」のカテを作ったりしていているわけで。
なので、子育ても一段落してもう一度好きなクルマに乗ろうと思ったとき、まっ先に思い浮かんだのも、蛇と盾の、あのエンブレム。

けれどけれど、思うようなアルファにめぐり会うことができなくて、選んだのが、アバルト プントなわけだったのですが。
今回は、そのいきさつを書こうと思います。

ある、クルマ好き小僧の記憶

昔々、とある田舎に、クルマ好きの小僧がおりました。
小学生に上がるか上がらないか、といった年頃で、家の近くの国道を「ブロロロッ〜」と行き交うクルマを眺めるのが好きでした。

映画「三丁目の夕日」のワンシーン。僕の場合、田舎だったので、こんなに賑やかな感じじゃなかったけど。画像はhttp://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/004/695/76/1/200511_img_3.jpgより
映画「三丁目の夕日」のワンシーン。僕の場合、田舎だったので市電は走ってなかったし、もっとスカスカしていたけど。年代的にはあと10年は新しくてクルマも多かった気がする。画像はhttp://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/004/695/76/1/200511_img_3.jpgより

その国道である日、一台のクルマがものすごい勢いで小僧の前を通り過ぎたのです。
フロントは良く見えなかったけど、ルーフからなだらかに降りてくるリアエンドのライン。そのリアを、アクセルを開けるたびに地面にこすりつけるようにして走り去る後ろ姿。
ルーフからリアに続くなだらかなライン、美しく湾曲したリアのガラス、テールエンドに収まったランプ。
そして、聞いたことのない迫力の排気音が、そのイメージをさらに強く焼き付けたのです。

ホコリっぽい、田舎の国道。荒い舗装、スカスカとした目抜き通りの空間。
まばらに通行する、じゃがいものような国産のトラック、乗用車。
そんな日常の光景を、美しいラインと凄みのある音が、切り裂くように去って行きました。

あのとき、あの一台を見てから、いつも国道脇に行ったときには、目に焼き付いたリアエンドの造形を探すのですが、めったにお目にかかることはありませんでした。
そして成長した小僧は、クルマ雑誌を見て、あのときのクルマが「アルファロメオ ジュリアGT」だと知るのでした。

その後、小僧は成長するにつれ、フランスのリセエンヌみたいなルノーサンク・アルピーヌチューンなどに心を動かしつつも、基本は、イタリアのグラマラスなハスキーボイスに“首ったけ”でした。

いまから20年ほど前、小僧がなけなしのカネを払って(ローンでしたが)初めてのアルファ:1750 berlinaにに乗れたときはとてもウキウキ。「僕もついにアルファ乗り」と、自慢していました。

アルファ ロメオ 1750 Berlina
ショップに並んでいた 1750 Berlina。当時、ジュリアシリーズは、この2倍近いプライスだった。

 

しかし、結婚や独立などで生活のステージが変わったことで少しクルマから離れた生活が続きました。そしてようやく生活も落ち着き、クルマ探しをはじめたときも、まっ先に蛇と盾のクルマを探し始めたわけです。

めでたしめでたし、というわけにはいかなかったのですね。このクルマ探しの旅は。

 

僕の心のアルファに、僕は乗りたい!

今回のクルマ選びは、前にも書きましたが、古いクルマを直しながら乗るのではなく、「ドライビングすること」、その楽しみを追求したいと思ったわけです。
私もアラフィフを迎えて、目も感性も体力もいよいよ下り坂。本格的にダメになる前に、五感と筋肉をフルに使ってクルマを操りたい、と思ったのです。

そのために乗るクルマとして、ミラノの心のアイドルは、まさにうってつけ。と、信じてやまなかったのです。
まっ先に試乗に行ったのは言うまでもありません。

あのときの候補としては、
新車であれば、ジュリエッタ。でも最強バージョンの1750QVは予算的にNG。
中古で選ぶなら、147か156、
なおかつ縁があれば、名機として名高いV6エンジン搭載の「GTA」も。
覚悟があれば155、
さらに、75も狙ってしまおうか!? という下心(?)も。

「走って楽しむ」という目的があったので、基本はマニュアルトランスミッション。
評判(良くも悪くも)のロボタイズドのセレスピードは除外。
というラインで探し始めたのです。

ジュリエッタと、147には試乗しました。
で、どちらも今ひとつしっくりこなかった。残念ながら。

ジュリエッタ。試乗のとき、写真を撮り忘れていたので、オフィシャルサイトより。
ジュリエッタ。試乗のとき、写真を撮り忘れていたので、オフィシャルサイトより。

147は後期型だったので、2リットルのエンジンはフィアット製。それをアルファがヘッド回りを完全に新設計して自社製としたもの。そのせいかどうか定かではないけれど、エンジンから感じる「パッション」がいまひとつ。
回転フィールが、記憶と身体に刻まれたアルファ Berlinaの感触とは違う。鋳鉄ブロックとアルミといった素材の違いもあったのでしょうが、俊敏なレスポンス、気持ちいい吹け上がりやリニアリティといった、僕が体験したアルファならではのエンジン・フィールがあまり感じられなかったのです。現代のエンジンに、ビンテージ期の“ワビサビ”を求めちゃダメなのかなぁ、とも思ったり。

マルチエア+ダウンサイジングターボになったジュリエッタは、さらにモダンになっていて。がっしりしたボディにマナーの良いエンジン、という印象。
走りはしっかりして硬質な感じだけど、なんというか、僕がアルファに期待していたハツラツさがない。D・N・Aスイッチをいじると、確かに活発になるけれど。

軽快なエンジンを活かしてひらひらとロールさせながらコーナーを抜けていく、その昔、1750Berlinaで味わったあの走りが、もう感じられなかったのです。Berlinaって、見ためは縁側でひなたぼっこしているオジサンみたいなショボいルックスだったけど、シートに座ってアクセルを踏むと、がぜん面白くて楽しくて、止まりたくない降りたくないクルマだった。走るとスゴいんです!

これは、試乗した当時からよく言われていたのですが、アルファのジュリエッタ最新型は、フォルクスワーゲン・ゴルフのコンペティターとして企画されたらしいです。そのためにジュリエッタは、剛性感や各部の作りも、ゴルフに近づくようなアプローチにした、と。
僕も実際に乗って、そう思いました。これなら、ゴルフに乗っていた人が、ハコ替えの選択肢としてジュリエッタを挙げることができそう、と。

でも僕は、僕が体験した、あの愉快で楽しかった「アルファ」に乗りたい。もう一度ハンドルを握って、アクセルを踏んで道を駆け抜けたい。楽しいくらいに吹き上がるエンジン、軽快でヒラヒラの乗り味。

なので今回ジュリエッタは選べない。残念ながら。147もちょっと、なぁ。どうしよう?

(長くなったので続きます)