10km/hの革命? [ 新東名の制限速度、110km/hへ試験的に引き上げ]
この直線路をたった100km/hの制限速度内で走れる人は、神様か仏様ぐらいじゃないか。
とにかくすごい直線路。どどどーっと、広々とした3車線が目の前に広がる。いったん下ってまた上る、ゆるやかな起伏を伴った立体的な景色は、まるで大陸の高速道を見ているよう。
こんなに広々としてまっすぐな道路、100km/hの制限速度を守って走るなんてムリ。
新東名高速道路、東京方面から走って行って森掛川ICから浜松浜北ICを過ぎたあたりのことだ。
もともとこの高速道路は120km/hで走行可能なように設計されたにもかかわらず、古くさい速度制限が設定されたままになっていた。
それがようやく110km/hに試験的に引き上げられることになった。
「新東名速度110キロ試行 新静岡―森掛川で17年度」静岡新聞
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時代遅れの制限速度
「120km/hでも安全に走れるように設計したんだから、速度制限もそのスピードでいいでしょ」
というつもりで開業したものの、警察からの許可が下りなかった新東名。
その腹いせ(?)にNEXCOはオービスの設置許可をずるずると先延ばししていたとか、してなかったとか、まことしやかなウワサを聞いたことがある。あんなにスピード出せそうな道路なのに、開業当初はまったくオービスがなかったので不思議だったけど。
警察としては新しい高速道路ができることで事故が増えたらイヤなんだろう。しかも「前例のない」制限速度120km/hなんかを認めたら、もし何かあったときに責任問題になる。ま、お役所仕事なんてそんなもんなんだろうな、とは思っていた。
ただね。僕の記憶が正しければ、高速道路の制限速度が100km/hになったのは、確か東名高速道路が開通した1968年のときだったと思う。
当時のカローラは1.1L、60ps、前後ドラムブレーキと装備も貧弱だった。スピード出せないし、止まれない。たぶん、相当な度胸がないと100km/hなんて“ハイスピード”は出せなかったんじゃないか。
そのカローラもあれから50年、半世紀近くたったいま、最下位グレードの1.3Lモデルでも95ps、ブレーキも前輪はベンチレーテッドディスクが奢られるようになった(リアはドラムのまま!)。そんなにムリしなくても120~130km/hくらいは出せるだろうし、シャシーもブレーキもそのスピードを許容できるキャパがあるはずだ。
それに高速道路(新東名)の設計も進化した。基本的に設計速度は140km/h、だから120km/hを制限速度にしても無理なく安全に走れるように設計されている。
実際に走ってみると、車線や路肩が広くたっぷり取られ、トンネルの断面も大きく、高速で進入しても圧迫感はほとんどない。中央道小仏トンネルのように、車線のすぐ脇にトンネルが迫ってきて、危なっかしくてついアクセルを緩めて渋滞のボトルネックになってしまうような、そんなお粗末な作りは見られない。
この半世紀、クルマも道路もちゃんと進化してるのに、警察の取り締まりが時代遅れだったわけ。
10km/hで変わる? 新東名の走り
僕が住んでいる東京エリアの高速道路は、実際に走ってみると「低速道路」だ。
日曜日しか運転しないようなオトーサンのワンボックスとかが、追い越し車線をノロノロとくだらなく走ってる。
「スピードは悪」という、1970年代から80年代にかけてのアンチ暴走族の風潮とか、
「80キロで走って省燃費、エコロジー」といった間違ったメッセージとかが影響しているのかもしれない。
それから、自分で判断することをしない、日本人にありがちな“よそと同じがいい”という思考回路とか、
一番最低のレベルに合わせる旧社会党系の悪平等主義とか、
そういった日本ならではの社会風土も「低速道路」の一因となっているように思える。
そして一番の要因は、半世紀も変わらなかった制限速度だ。断じてそうだと僕は信じてる。
いくらクルマが進化して速くなったって、制限速度が昔のままなら意味が無い。どんなに斬新なテクノロジーも、すごいパフォーマンスも、使えないんじゃ意味が無い。そんなの単なるカタログスペックとして、買うときや買ったあと友達に自慢するときのネタにしかならない。
そして実際に高速道路を走ってもノロノロとした流れで、最新のスーパーパフォーマンスは宝の持ち腐れ。単にガソリンを消費してCO2を排出するだけ。ドライバーは走ることや運転に飽きてくる。カーナビに表示させたテレビの方が面白いし、それを見ながら追い越し車線を走っても誰からも文句言われないし、ノロノロとくだらない走りを続けることになる。
わざわざ高い料金払って(日本の高速道路料金は世界の中でもかなり高い)、ノロノロだらだら走ってるだなんて愚の骨頂でしかない。
こういう間違った風潮を、今回の制限速度の見直しが変えてくれたら、と願っている。
高速道路っていうのは、速く走る道路。制限速度が少し上がることで認識がちょっと変わり、きちんとアクセルを開けて速く走らないといけない、そんなふうに思うドライバーが増えれば、今のだらけた走りの流れがもうちょっとピシッと変わるんじゃないかと期待しているんだけど。
たった10km/hだけどね。でも「千丈の堤も蟻の一穴から」、頑丈な堤防も蟻が開けた穴から壊れることもある、っていうでしょ。
このたった10km/hが起こす変化に、かなり期待してる。
でも大変残念ながら、冒頭に書いた浜松浜北IC付近は今回の制限速度が引き上げから除外されている。その手前(東京方面から行くと)の森掛川ICで110km/h制限が終わってしまうので、同じ気分で引き続きアクセル開けていると取り締まりの狙い撃ちにあう恐れあり。くれぐれも気をつけたい。
画像はこちらより:http://www.watanabesato.co.jp/recruit/story/story01/
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新東名開通前のムービーだけど面白い。一種の環境映像、といったら褒めすぎ?
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