フィアット製のアルファロメオより、フィアット製のフィアット。沢村慎太朗さんの有料メルマガ感想

フィアット製のアルファロメオより、フィアット製のフィアット。沢村慎太朗さんの有料メルマガ感想

有料メールマガジン、なるものを読み始めてみた。

いろいろあるけれど、沢村慎太朗さんのメルマガに登録してみた。
沢村さんは、僕の大好きな「スーパーカー誕生」の著者だったから、というのが大きな理由。彼のメルマガを再編集した「午前零時の自動車評論」もいくつか読んだことがある。
細かなデータや史実をもとにした彼の文章は、さすがプロだなと感心している。

そのメルマガでアバルトに関する記事を発見したので、さっそく取りよせて読んでみた。

有料メルマガの記事なのでネタバレ的なことは書けないけれど、うんうん、と肯けることがいっぱいあった。
その中のひとつが、アルファロメオとアバルトの違いだ。

◎アルファロメオ=高級車=豊かで奥行きも深い感じ
◎アバルト=実用車ベース=刺激性はあるが奥行きが感じられない

といった対比で沢村さんは語っていた。

エンジンやシャシーを、戦前からの高級車をベースに作って、そのおかげでちょっとしたエンジンの回り方やサスの動き方にも、情感の豊かさ、奥行きの深さが感じられるアルファに対し、

実用車のフィアットをベースにしたアバルトにはそこまでの含蓄は感じられない。そこにあるのは、「速さ」「運転の面白さ」の追求、いってみれば刺激性のみ、

というわけ。

ほんと、それな。僕もまったく同感。

以前、自分のアバルト プントの感想をSNSサイトに書いたとき、
アルファロメオ=陽気で開放的なイタリア女
アバルト プント=エキセントリックでマニアック(魔性の女?)
と対比したことがある。

とろっとした豊潤なエンジンの回転、そこからの音楽的ともいえる快適な吹き上がりなどで、乗る人をワクワクさせ虜にしてしまう、開放的なアルファロメオ。ボディデザインや各部の作りなども、昔のクルマはとても洗練されていた(よく錆びたけどw)。そんなところに余裕というか遊びも感じられて、いっそう魅力的だった。

それに対して僕のアバルト プントは、求めるのは「速さ」だけ。速ければ、内装がちょっとアレでも気にしない、町のチューニング屋さんが仕立てるクルマのような、おたくが自分の趣味や興味の追究に没頭しているかのような、あえて言ってしまうと独善的なイメージ。アバルトはもともとからレース屋さんなので、そのアプローチは当たり前だと思う。実際に内装など各部の仕上がりは「実用車」の出自が隠せないし。

まさに、陽と陰。アルファとアバルトは、正反対なんだ。乗って、感じてみると。

だけどね。
そこにはパラダイムシフト、大きな転換点があって。

いままで書いてきたことが言えるのは、アルファロメオが自分たちでエンジンを作っていたときまでだ。
フィアットのエンジンを積むようになってからも、ジュリアシリーズなどで築き上げてきたアルファロメオの豊かな乗り味が継承されているかといったら、僕ははっきりノーと言いたい。

実際、アバルト プントを選ぶ前に現行のFFジュリエッタに乗ったけれど、まったくピンとこなかった。
別にFFになっていたから、というわけではなく。昔、僕が乗っていた1750 Berlinaや、友人のジュリア1600GTV等で感じられていた豊かな情感はなかった。まったく別モノになっていた。

ちょっと前まで、アルファロメオはフィアットに吸収されてエンジンなどパーツの共用が進んでも、エンジンだけは「純血」をなんとか守り続けてきた。
155の時は腰下はフィアット製でもわざわざ鋳鉄シリンダーブロックを使ったり、ヘッドを独自のツインスパークに完走したり。

でも、現代のアルファロメオ ジュリエッタが積んでいるのは、フィアット製マルチエアエンジン。

そんな「フィアット製のアルファロメオ」のアクセルを踏んでも、僕の心は以前のようにワクワクすることはなかった。アクセルを開けたときの豊潤な感じ、音楽のような音なんて、もはやこれっぽっちもなかった。回転が事務的に上がったり下がったりするエンジンと、それにあわせた音。フィアットならではの、実用的なクルマ、現代の工業製品になっていた。
これだったら同じエンジンを積んだ「フィアット製のフィアット」で、それをアバルトが仕上げたアバルト プントの方が、ある意味「正統派」だよな、とさえ思った。

僕が乗りたいアルファは今はもうない。僕が乗りたかったのは以前の豊かな時代のアルファロメだったので、現実的になりすぎてしまったいまのアルファロメオは違うな、と。それがアバルト プントを選んだ一番の理由になった。

こんなことをほかのクルマ友だちに言っても、何せ彼らは昔のアルファを知らないので、ぜんぜん分かってもらえないんだけど。
アルファびいきの沢村さんだったら分かってくれるんじゃないかと思った。

こんな感じで、アバルトとアルファロメオのコメントが書かれている沢村さんのメルマガ、かなり面白かった。
このバックナンバーにはほかにも、アバルト124とロードスターに共通する欠点とか、アバルト グランデプントと500を比較したときの500の優位点とか、これまで読んだ商業雑誌の記事にはない着眼点や事象がいっぱいあって、とてもためになったし。
面白う、ございました。

メルマガ、イイじゃん。

沢村さんの名著にして超大作! これはゼッタイ面白いから!!