代車にパンダを借りて乗った。最後のフィアット車だった。

代車にパンダを借りて乗った。最後のフィアット車だった。

ウチのアバルト プント、タイベル交換の時期になりまして。工場に1週間預けることになって、それで代車を借りた。
来た代車が、TwinAirエンジンのパンダ! これに約1週間乗ってたら、例によってマルキオンネに対する怨念がフツフツと湧いてきた。マルキ怨念。で、この文章を書いてみた。怨念あるだけに、ちょっと長いねん。

 

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スクワークル。代車で来たパンダをひと目見て、このキーワードを思い出した。
「スクエア + サークル」の造語だそうで。角が丸い四角のこと。それが車全体にデザインエレメントとして散りばめられている。
以前読んだフィアットが出したパンダの新車リリースだと、ホッとするとか優しく接することができる、といったこのカタチの効能みたいのが書いてあった気がする。

車全体のスタイリングは、まー最近のミニワンボックスの作法でアレなんですが、実際に借り出してあちこち見ると、クルマ全体にスクワークルが散りばめられている。

まずヘッドライトのレンズカットがスクワークル。
グリルのメッシュのデザインもスクワークル。
ホイールのハブキャップまでスクワークルなのには笑った。ここまでやったら、タイヤもスクワークルにすれば良かったのに(ソレハムリ!)

車内に入ると、もっとスクワークルがいっぱい! いちばんビックリしたのはハンドル。見ためスクワークルなんだけど、それはハンドル内側のスクワークルなデザインの張り地のせいで、外周はちゃんと円:サークルになってる。信号待ちのとき、そっとハンドルの外周をなぞってみたら、ちゃんと丸く、サークルしてた。

それからサイドブレーキ。デニッシュパンみたいなスクワークルのハンドルが、円周状に上下する作りになっている。初めて乗ったとき、解除しようとしたけどできなかった。スクワークル初心者には難しい。
サイドブレーキのハンドルをスクワークルにしたかったのでそんな動きになったのか、と思ったんだけど、そこまでしてスクワークルする必要あるのか!?

もちろん、メーターパネルやダッシュボード、車内スピーカー、シートの柄などにもスクワークルがぞくぞく登場する。

さらにダッシュボード上には古代インカ文字みたいなパターンが刻まれていて、目を近づけて見たら「PANDA」の字紋になってた。
ダッシュボード自体はブラックアウトされていて、陽射しに照らされても昔のマセラティみたいにフロントガラスに盛大に反射して視界をさえぎったりしないんだけど(そこはやっと学んだみたいだ > フィアット)、この「PANDA」のエンボス仕上げが微妙に反射して、フロントグラスにチラチラ反射してうるさい。ま、晴れた昼間に走らなければ気にならないことなんだが。

フロントドアポケットにはペットボトルを置けるように、ちょっとした凹が設けられていて、「お、こじゃれてるじゃん」と感心したのもつかの間、オジサンがよく飲む500ミリペットボトルを入れようとしたら、ポケット自体の天地が足らず納められなかった。やれやれ。うちのアバルト プントもそうなんだよな。(ボトルホルダーはサイドブレーキ前方にも用意されてる)

そんなわけで、このパンダには無駄なデザインがてんこ盛りだ。
だけど、ビバ!イタリアンデザイン、なのだ。

デザイン自体には何の意味もないけど、デザイナーの単なる自己主張、というか思いつきかも知れないけれど、使う人を楽しませようとする、今までとは違ったものを作ろう、そういうモノで生活を彩ろうという、イタリアンデザインがずっと持ち続けてきたその心意気に二重マル、いや二重スクワークルあげる。

ちなみにフィアットが去年出した新型「Tipo」見ました? ずっと前の、ジウジアーロデザインの初代が好きな人は見ない方がいい。絶望するから。(コワいモノ見たい、という人はこちらでどうぞ。でも、どうなっても知らないよw)

「好き」とか「愛着」とかいった気持ちをわざと持てなくさせて、それですぐに買い替えたくなる、そんなことを狙ってるかのようなもうホント、どうでもいいデザイン。最近のトヨタだってあんな無味乾燥な見栄え(デザインとは言いたくない)のクルマは作らないよ。

デザイン死んだら、イタ車なんて死んだも同然じゃんか。

マルキオンネのせいで商業主義がプンプン臭うの「タイヤ4つで動く金属とプラスチックのカタマリ」を作るメーカーに成り下がっちゃった、最近のフィアットって。

そういう今の“惨状”を見ちゃうと、このパンダのムダてんこ盛りのデザインというか各部にわたる作り込みは、とてもとても愛おしい。
このムダが、大好きだよ。キミこそ、フィアットだよ。歴史と伝統とお笑いに満ちたフィアットの血を受け継いだ、最後の一台だよ。

中国のパンダ(動物のほう)は、関係者の努力のかいあって何とか生きながらえているけど、イタリアに生息していたクルマのパンダは、このモデルでジ・エンド。終わったなぁ、絶滅だなぁ。僕の中では。
そんな、佳き時代のフィアットの最後を飾る「絶滅寸前種」として、まさにこのパンダは貴重だよ。超貴重。

もっと詳しいことは、こっちに書いてます。