旧車乗りには、神様から罰が下る。[ 20年落ちのアルファロメオに乗ってたときのこと ]

旧車乗りには、神様から罰が下る。[ 20年落ちのアルファロメオに乗ってたときのこと ]
アルファロメオ1750とベレット
アルファ納車の日、左はそれまで乗ってたベレット。このあと東名高速で、、、

神様の思し召しに逆らってるわけだから、こういう罰を受けるのは当たり前だよなぁ、、、
こんなことを昔々、当時20年落ちの旧車に乗っていて思ったことがある。

乗っていたのは1971年モデルのアルファロメオ1750ベルリーナ。
僕が買ったのはバブル時代、1980年代終わりの頃だったから当時ですでにほぼ20年落ち。
伊藤忠のディーラーもので屋根付き車庫で大切に保存されていた個体らしい。いまでいう“納屋もの”? オドメーターもそんなに進んでなかったと思う。

旧車にありがちなダッシュボードの割れもなく、豚革と説明されたシートはほつれや破れもなく分厚くて座り心地いい、ハンドルやホイールもノーマルのものが装着されてた。
しかもクーラー付き(僕にとっては初クーラー車!)で、これがよく効いた!

長い間乗ってなかったらしいけど、ショップの調整でエンジンは一発で始動、アイドリングも安定してる。
乗れば乗るほど、調子よくなりそうな予感がした。

アルファロメオ1750ベルリーナ、ダッシュボード
1750はクラシカルなダッシュボード、なつかしい

これがよく壊れたんだ。
このアルファの前にはやっぱり20年落ちのいすゞ ベレットに乗ってて、これもあちこち壊れたり直したりしていたから覚悟はしていたけど、今回はなんと、納車初日にレッカーのお世話になった。

納車後すぐに東名に入って調子良く走っていたら、夜の御殿場インターの手前で「ポンッ!」と何か小さいものが破裂した音。バス停がすぐあったのでそこに停めて確かめたらラジエーターの下からぽろぽろとこぼれ落ちる液体がある。
「あー、ウォーターポンプですねぇ」と、呼んだJAFの人がエンジンルームを懐中電灯で照らして確定診断してくれた。それまであんまり回してなかったのに、いきなり高速で走らせちゃったものだからへたってたところからイカれたんだと思う。老体にむち打っちゃったわけだ、納車されて嬉しかったとはいえバカだったな。
結局、御殿場インターまでレッカーしてもらってアルファはそこに安置、僕は高速バスで翌朝東京に戻った。やれやれ。

そのあともブレーキのサーボ(右ハンドルは2連)がパンクしたり、燃料ポンプが劣化して高回転でガス欠症状が出たり、フロントウインドウから雨漏りがして、それをフロアカーペットが吸収してだんだんへんな臭いを出し始めたり(結局自分で剥がした)、機関系から足回り、ボディまでいろいろ問題が出た。
車検のときなんか、交換を頼んでいたパーツがなかな来なくて(イタ車あるある)結局2か月もかかった。余談だけど、昔は登録から10年超になると1年車検で、12か月しか乗れないのに2か月も動かせないなんてけっこう不満だった。それで長期間工場に置きっぱなしになっていたら、今度はフロアから生えているブレーキレバーが錆びて固着してブレーキがかかりっぱなしに! せっかくウキウキしながら工場からピックアップしたのに急遽Uターンするハメに。ガッカリだったよ!

そんなこんなで毎月ショップ通いしてましたよ、買ったばっかりの頃は。遊びに出かけて途中で壊れて、家に帰らず工場に直行したり。
それで精神的にも体力的にも金銭的にもキツくなったりしてた。出かけよう!っていうときに壊れてショボンとしたり、自分で修理するために休日を使ったり、それがオオゴトになって作業が夜中になり翌日寝不足で仕事に行ったり、工場で修理となると出費がかさんだり。
旧車ってやっぱり“苦労標準装備”、それは楽しい苦労でもあるけど、でも仕事で忙しいときとかお金なくてピーピーしてるときに、大きめの修理が重なるとやっぱり辛い、、、

そのとき、冒頭に書いたことを思ったわけ。

生きとし生けるものはもちろん、この世にあるすべてのものは朽ち果て、なくなる運命にある。それはこの世を作った神様の思し召し。
それに逆らって、僕はアルファロメオという一台のクルマを生きながらえさせようとしてる。神様の思し召しに逆らってる。
だから、アルファがこうして次々と壊れ、それで僕が苦労するのは、これらはすべて神様に逆らっている罰なんだ、と。
修理に出したあとショップから帰ってアパートでひとり、しょんぼりとビール飲みつつ貯金通帳見ながらそんなこと思ってましたよ。

それでも1年くらいたったら、ため息なことも少なくなってきた。
僕と一緒に春夏秋冬を過ごし、暑い寒いをアルファが体験して、また僕の走り方にも機械が馴染んだりして、初期トラブルつぶしがだいたい終わったんだと思う。
2年目からはイイ感じであちこち出かけられるようになったし、誘われてジムカーナに出たり、アルファの知り合いも増えたり、アルファライフ(笑)が充実してきた。

それでもそれでも、壊れるところはやっぱり壊れる。突然壊れたりするところだけでなく、劣化していく部品はやがて交換しないといけないし、それらは走っている以上は永遠になくならない。
雨漏り(何やっても止まらない!)みたいな持病もあったり、無理やり右ハンドルにした悪影響(フロアが腐っていく!)もあったり、そういうネガな部分も何とかしたい。

やっぱり、神様の思し召しからは逃れられない。

僕が乗ってた当時は20年もの、いまはあれから30年経ってるから今も動いているとしたら50年もの! ビンテージワインだったらすごい値段が付いてるんじゃないか。
20年ものでさえあれだけ苦労させられたんだから、それから30年以上も維持していこうとしたら、かかる手間と費用はハンパないはず。
今、街で見かける旧車にはぜんぶ、代々受け継いできたオーナーさんたちがかけてきた、そういう手間とお金がめちゃめちゃ注ぎ込まれている。それは愛情とか情熱とかいうぼんやりしたものじゃなくて、手間と時間そしてお金という、リアルなリソースだ。

「たっけーなー」って何も知らないワカゾーが旧車の値段見て文句垂れてたりするけど、その値段には相応のわけがある。
このクルマは価値がある、そう感じた人が代々受け継いで、自らのリソースを割いてその価値をみんなで守ってきたんだよ。それを考えたらその値段は絶対に高くない、そういう値段になっちゃうんだよ(ボッタクリは除く)。

僕が乗って、そしてイタ車の楽しさを教えてくれた濃紺の1750ベルリーナも、まだどこかで走ってくれていたら嬉しいな。
※なのに13年超のクルマ増税だなんて、日本の行政はひどすぎる

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これ見つけちゃって即買いしちゃった(笑)